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<<   作成日時 : 2006/08/22 12:33   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 35 / トラックバック 3 / コメント 15

平成17年度文化庁「国語に関する世論調査」によると、仕事が終わった時にかける言葉として、相手の職階が自分より上だと,約7割が「お疲れ様(でした)」、相手の職階が下だと「御苦労様(でした)」と使い分ける人が多いそうです。

使い分けの規則としては、相手が目上か目下かだけで決めてしまえば簡単ですね。しかし、それだけでしょうか?

この結果について、台湾で一波未平一波又起というブログをしているtinuyamaさんが「御苦労様」という記事(7月27日)で書かれていました。その中で、「「苦労」なり「疲れ」などの「骨折り」が話者のためになされたのかどうか」という視点を取り入れて考えることを提案しています。

聞き手(「ご苦労様・お疲れ様です・でした」と言われる人)の行為が話し手(「ご苦労様・お疲れ様です・でした」と言う人)一波未平一波又起さんが目上でも使う例として、次の三つを挙げています。

1.ヤクザ映画で、「兄貴」がわけあつて刑務所に入り、刑期を終へて出所。門の外には「兄貴」の弟分たちが待っていて、タバコに火をつけてあげながら言う場合、 「御勤め御苦労様でした」というだろう。「兄貴」が弟分たちを含む組織のために一人で損な役回りを引き受けてくれたことが、弟分たちの利益になったと考えられる。

2.路上で夜警のお巡りさんに出会った時、「お疲れ様です」というより、「ご苦労様です」というほうが自然。

3.夫婦の会話、妻が夫に(あるいは夫が妻に)、「お疲れ様でした」というか、「御苦労様でした」というかで、相手の「骨折り」の内容に違いがあるのでは?「御苦労様」のほうに「感謝の気持ち」、「私(たち)のためにありがたう」というニュアンスを感じる。


1.この場合、「お疲れ様でした」だと音の響きとしても柔らかいというか、「ご苦労様でした」ってほうが濁音が多くてさまになると思います。

2.のお巡りさんの場合、見回ることは「仕事」ですることが当たり前、かつそれが話し手にとって社会一般の治安の向上という利益を産んでいますね。ここで、「お疲れ様です」というとなんだかお巡りさんの目下の新人警官みたいです。

3.どちらも言われたことはないが、昔の男風に考えると確かに「ご苦労様」のほうが謝意を感じる。

確かに、聞き手の行為が話し手の利益になったかどうかが関係しているようですね。

蒲谷、川口、坂本(1998)でも、話し手と聞き手の上下関係だけでなく、聞き手の行動が話しての利益となったかどうかによる使い分けがあると説明しています。(ちなみにこの本は、普通の日本語教育の本では出てこない考え方もあり、敬語教育を考える上で大変勉強になります。場面の改まり度や話し手と聞き手の関係をもとに+2,+1,0,-1,-2などと数値化してみるとか、依頼、進め、許可求めなどの機能を行為者、決定権、利益が聞き手・話し手のどちらにあるのかなど、尊敬語・謙譲語・丁寧語という言材としての敬語の枠を超えたレベルで敬語・待遇表現を捉えており、普通の敬語マニュアル本とはちょっと違います。)

相手との関係に応じて、文末を変える必要があり、その点だけで目上に言えるかどうかという問題もある。例えば、同僚に「お疲れ」とは言えても、上司には言えず、「お疲れ様です」などとしなくてはいけない。文末の表現が何かというのと、ご苦労・お疲れどちらのグループかというのは別の問題。

ご苦労様です・でした
 自分の利益になることをしてもらったことに対するねぎらい
 例:注文したビールを配達してくれた酒屋の店員に対して

お疲れ様です・でした
 行動そのものの苦労に対するねぎらい
 例:みんなで苦労した仕事が終わったときに、お互いに

ただし、「ご苦労様」、「お疲れ様」などのねぎらい表現は、本来上から下に向けられるものなので、そうでない場合には、感謝やお礼などの表現に変えたほうが好ましい
蒲谷 宏、川口 義一、坂本 恵(1998) 『敬語表現』 大修館


この本の「ご苦労様です」のところで、上司にも言える例として、上司がみんなのために非常に苦労して仕事をしてきたことに対してという場合があげられているのですが、私はちょっと抵抗を感じるというか新入社員のときに相手が目上の場合には、自動的に「お疲れ様でした」になるように仕込まれたので、そんな場合には「ご苦労様でした」とはあえて言わないほうが安全かなと思ってしまいますね。

アルバイトなんかでも、社内だけど他の店舗や他の社員・アルバイトから電話があったら「お疲れ様です」と挨拶し、先にあがる同僚・上司には残る側が「お疲れ様でした」っていうのは結構徹底されているように思います。

あ、でもこの間、ある人が自分が先に帰るのに、「お疲れ様でした」って言ってるのに気が付きました。「『お先に失礼します』でっせ」と思ったものの、帰る相手を呼び止めてまで言うほどでもないかなとなんとなく言いそびれてしまっています。言ってあげたほうがいいのでしょうか。

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コメント(15件)

内 容 ニックネーム/日時
自分ではあまり意識したことなかったけど、仕事が終わった時にかける言葉、私は「お疲れ様」しか使ったことないです。宅配便の人とか、知らない人に言葉をかけるときは「ご苦労様」が多いかな。
でも本来は上から下に向けられる言葉なんですね。うーむ。日本語ってむずかしい。イタリアでは何でもグラツィエで済ませてしまっています(汗)。
Yukako
2006/08/22 15:49
私も「目上にはお疲れ様」と教わったので、そうしてきました。
宅配の人や郵便屋さんには「ご苦労様」と言いますが。
「お疲れ様」「ご苦労様」の用法について考えたことはありませんでした。
でも、そうですね、「自分の利益になったかどうか」がポイントと言われると納得できますね!!
みーこ
2006/08/23 09:55
>Yukakoさん
旅行中にグラツィエ、バベーネって見よう見まね(聞きよう聞きまね?)で怪しげに連発していました。なんだか楽しかったです。(脈絡ないですね。。。)

>みーこさん
目上といえば、恩師を空港に出迎えに行った時に、なんと言ったものかと一瞬わからなくなって「お疲れ様でした」と言ったのですが、ちょっと添乗員みたいだったかなと思い返してしまいました。
ヒロシ
2006/08/23 13:17
「ご苦労様」って言ったこと、そういえばないです。なんか、エラそうに聞こえる気がして。特に。女性から男性には言いにくいセリフなんじゃないかな〜っていう印象がありますねえ。
シーラカンス
2006/08/23 22:20
TBありがとうございます。『敬語表現』、自分もぜひ読んでみます。やはり「話者の利益」という視点はありますよね。自分の思いつきが、それほど的外れではなかったことがわかって、ホッとしました。本当にありがとうございます。
tinuyama
URL
2006/08/24 01:51
話し手の利益という観点は面白いですね〜。出所アニキへの「ご苦労さんでした」も、実は組織(親分)>構成員という観点からだったりして。

某企業で受付をしていた時は「お疲れ様です」も本来は目上の方に使うのに適さない表現だとかで「お世話様です」というワケのわからないフレーズを使うよう指導されてました。相手にしたら「別に世話してないっつの」って感じですよねw 日本語って面白い。
ACHI
URL
2006/08/24 03:54
>シーラカンスさん
エラそう、確かにそうかもしれませんね。女性でも例えば、サザエさんが配達に来た酒屋のお兄さんに言えそうですけどね。ある程度相手より年齢的にも上になっているほうが言い易そうです。

>tinuyamaさん
いやー、するどい語感をお持ちで、私ももっと磨かいでおかないといけないなぁと思います。「敬語表現」、お勧めです。

>Achiさん
「お疲れ様です」もイカンと言われたのですか?社内の人に「お世話様です」って、家族に「こんにちは」っていうぐらい不自然な気がするんですけどねー。
ヒロシ
2006/08/24 10:36
ちょっと論点を変えて。
授業後に
 教 師:じゃ、終わりましょう。
 学習者:先生、お疲れ様でした。
 教 師:・・・。
というやりとりを経験されたことはありませんか。
この場合、「ご苦労様」相手の行為が自分に利益をもたらしてくれたものだけど、上下関係の点から不適切。「お疲れ様」だと上下関係の点からはよくても自分に利益を与えてくれた相手の行為に対する感謝の念が表されていないから不適切…ということになるんでしょうか。
doi
URL
2006/08/27 21:58
ちなみに、英語(アメリカ社会)では上司−部下間/教師−学習者間で、どういうやりとりがされるんでしょうか。
doi
URL
2006/08/27 22:00
doiさんがお書きになったやりとりを経験した時、ものすごく違和感を感じました。やはり(こう言うのは嫌なんですが)目下である学生が目上の教師をねぎらうことが不適切なのではないでしょうか。

英語の場合、全部"Thank you"ですまされているのではないのかと思いますが、どうでしょう?授業後に学生が教師に "Thank you"と言うことは、少なくとも私の経験ではありませんが...。
yukki
URL
2006/08/28 02:33
横レスです。
「お疲れ様でした」っていうのは目下から目上にかけられる言葉ではあるって感じるんですが、その代わり「やってもらったこと」については言えない言葉であるっていう感じがしますね。要するに、当事者ではない目下のものが、目上の人の作業内容をハタで見ていて「お疲れ様でした」と声をかける…というのが妥当かなあっていう印象を受けます。
シーラカンス
2006/08/28 09:06
>doiさん
そうですねぇ。お疲れ様はシーラカンスさんがおっしゃるように、「やってもらったこと」に対する感謝の意がないようでイカンのでしょうね。yukkiさんの言うように、お疲れ様でもねぎらいには違いないし、やっぱだめですよね。英語では、上司-部下、教師学習者間でのはまた別記事にでもさせてもらいます。
ヒロシ
2006/08/28 11:58
>yukkiさん
Thank you.そうですねぇ。ときどき何かのアクティビティをI enjoyed itとか言う天真爛漫な人もいますけど、やっぱり無難なのはThank you系でしょうかね。でも自分の大学院の授業とかで、結構先生側も学生にThank youって言う人いるなぁと思うことが時々ありました。ま、あくまで挨拶なんでしょうけどね。でも、先生にはやっぱり「勉強になりました」と言ってほしいところですが、それも具体的じゃないとなんかただの挨拶になっていくし、難しいですね。
ヒロシ
2006/08/28 12:01
>シーラカンスさん
鋭いご指摘感謝します。確かに何かやってもらった場合にはお疲れ様は不適切な感じだし、はたで見ててなら許容できますね。一緒にやってた場合にもいけると思うんですが、いかがでしょう。ホッケーの練習の後で先輩には、「お疲れ様でした」と挨拶するように言われてたんですが、同じように何か会社で大掃除とか、そんな感じのことがあって、終わったときに一緒にやっていた上司に「お疲れ様でした」って言えそうですね。
ヒロシ
2006/08/28 12:05
時代の流れで意味用法は変わっていくのでしょうが、ご苦労様お疲れ様問題は自分の中で長年の懸案(笑)です。というのも自分に利益が全くなくても、見ず知らずの相手の苦労というか心のこもった行動を目にして、簡単な一言で称えたい場合に、この二つ以外に思い浮かばないからです。ありがとう以外に何かありますかねえ?
みっち
2010/07/20 21:11

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