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zoom RSS 困った学生

<<   作成日時 : 2005/10/29 00:18   >>

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「例の学生、5時半に来ますので、よろしく」
同僚の先生に言われた。

例の学生とは、その先生のセクションで1年生の日本語を取っている学生のこと。
もうクラスを半分ぐらい休んでいる。そのたびにその先生は宿題が何かなど連絡し続けていた。
その学生からは時折メールでその先生に連絡があり「明日は行きます」といって来て、
次の日になると休む、またメールで「すみません。来週は行きます」というのを繰り返していた。

日本語のクラスは月曜から木曜まで1時間ずつと、ラボが週に1時間あって、
5単位のコースなだけに中身が濃くて、少しでも休んだら大変なクラスなのにである。

本人いわくなにか精神的な問題があるらしい。

その日は、その同僚の先生からその学生に
「最後のチャンスとして、もう一度クラスに復帰してもいいけど
最後までもう休まないで来ないと、成績がC+以上にならなくて
来学期まで続けられないよって釘をさしてほしい」と頼まれていたのだった。

さて、時間になりその学生が来た。やや落ち着かない様子。
今から思えば普通のダメな学生が食い下がって「これまではすみませんでした。でもこれからほかの人以上に(extra work)をして、がんばって追いつきます(catch up)」みたいな必死さがあまり感じられなかった。

私は予定通り、言うべきことを言った。
「これまでの出席状況では普通は続けられなくなるぐらいでした。特別に考慮して、今から学期待つまで続けるチャンスをあげようということになりました。でもただでさえものすごくたくさん休んでいるので、来学期にも続けるためにC+の成績を取るには、今から休まないで毎日クラスに来てください。ラボも休まないでください。いいですか。」

一番言い方だったかどうか分からないが、私のつたない英語力が許す範囲でそれなりに配慮した言い方にしたつもりだったし、必要以上にきつくならないように注意した。

その学生は、素直に「分かりました。ちゃんと来るようにします」と言って静かに帰って行った。
今思えば笑顔がやや引きつっていたかもしれない。

次の日彼女はまた休んだ。そして同僚の先生のところにメールが来た。
昨日、1年生のコーディネーターの先生と話したことが引き金(trigger)になってパニックアタック(不安発作)になってしまいました。それで、一日中ベッドから出られませんでした。


これぞ逆効果である。
名指しで加害者にあげられれ、それなりに私もショックだった。まるで犯罪者の気分である。

翌日彼女は一人でテストを受けに来た。私のオフィスの隣の部屋の先生がその時間は部屋にいないので、貸してくれることになり、そこで試験を受けることになっていたのだ。それには問題が一つあった。私のオフィスと隣のオフィスの間には、通り抜けられるようにドアがあるのだが、そのドアが時々風で勝手に開いてしまうことだった。

私の机はそのドアの正面にあって、もしドアが開いたらその向こうにいる人とご対面してしまう。
私はその学生が試験を受けているあいだ、そのドアが開きはしないか気が気ではなかった。
同僚の先生がテープを張って、椅子をたてかけてくれたのだが、またいつ開いて私の顔を見て
パニックアタックになられたらどうしようと心配していたのだ。

「めりめり」
閉めてあるはずのドアがあいて、張ってあったテープがはずれる音がした。
私は思わず立ち上がって、逃げ出そうとしたが、目がドアから離れない。
こっちがパニックアタックになりそうである。

ドアが開いて、「あら、先生」となりの部屋の先生が笑顔とともに明るく登場。
「終わった、みたいよ。テスト」
テープで止めていることは言っていなかったのが悪いのだが、おかげでドキドキしてしまった。

その数日後、秋学期のちょうど折り返し地点、中間試験があった。
くしくもその例の学生は、私が試験監督(proctor)をすることになっている時間に登録していた。
「まずいな。まあ来たら来たでやるしかあるまい」と思っていたら、また同僚の先生にメールがあった。
先生。すみません。私の祖母がなくなったので、実家に帰らなくてはいけません。別の日に試験をうけさせてください。
困った学生である。本人も困ってはいるとだろうし、気の毒には思うが、どこまでが本当なのかさっぱりわからない。教師はカウンセラーではない。特に語学の教師にとっては仕事の範囲(job description)の中にはない。専門職のカウンセラーが関わるべきことだと思う。

それよりも、「終わったー」と嬉しそうな学生を横目に1年生と3年生の中間試験の採点の山を片付けなくてはいけないのだ。

あの学生のことが少し気にならなくはない。今学期はもうゆっくり休んで療養なり治療なり診療なりうけたほうがいいだろうにと思う。アメリカ人のステレオタイプとして、いつも明るくパーティー好きというのがあるかもしれないが、一方で鬱の人も多いし、テレビでもそんな薬の宣伝をよくしている。結構ストレスが多い大学生生活というのも原因の一つではないかと思う。キツイ日本語のコースを教えて、そんなストレスを作ることに加担しているのかもしれないと思わなくもない。。。。。。。。

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今学期の大学院のクラスで、初等教育の作文教育を取っています。その先生のやり方では、まず初めに取り組むジャンルは物語文(ナラティブ)だというのを前に書きましたが、その続きです。 ...続きを見る
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2006/10/24 18:24

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コメント(5件)

内 容 ニックネーム/日時
いろいろな生徒がいて、先生は大変ですね。個人的な事情はそれぞれあるのでしょうが、授業はセラピーではないし・・・
ご苦労をお察しします。
ビアンカ
2005/10/29 11:58
先生って本当に大変なんですね。びっくりしました。
私も先生していますが通信教育なのでやる気のない人はレポート出さないだけなのでそれで終わりです。
気にしないでやる気のある生徒さんを伸ばすほうに力を注いであげてくださいね。
スー
2005/10/29 22:40
僕も仕事柄、会社に来る沢山の大学生と接しますが、パニック症候群など精神的ストレスをかかえる学生がけっこういると彼らから聞きます。
遊びほうけてる学生ではなく、生真面目な子に多いようです。今回のケースは半ば被害妄想のようなものではないでしょうか?ヒロシさんは何も悪くないと思います。逆に気にし過ぎてストレスを溜めないでくださいね。
パニック症も含め、気分転換が下手な学生が多いのかもしれません。(大人にも多いですが…)事前策としてリフレッシュの手段をしっかり持つことを僕は会社に来る学生達に勧めています。
トニー
2005/10/30 04:33
>ビアンカさん
いやー、この学生は私の担任じゃないんで、まだ気が楽(N先生、すみません)なんですけどね。周りの学生に対する影響もありますし、今学期は思い切って休んでしまってくれないかと思っているんですが。

>スーさん
このケースは質としてはあまり珍しくはないけど、ほとんどのほかの学生は日本の大学生の何倍も必死に勉強してくれます。手前味噌ですが、先生は別にして、うちの学校の学生はかなり優秀です。それになんと言っても日本語のクラスは5単位なので、GPAという総合成績指標に与える影響が多いので、たいてい宿題などやることはやるし、ほとんど毎日小テストがあるので、その準備も必ずしてくる人がほとんどです。自分が学生だったら、続けられるかなとびびるほどです。
ヒロシ
2005/10/30 09:34
>トニーさん
日本でもいるんですね、パニック症候群の学生。今回の学生の場合、通院もしているし、本人なりにはすることをしているようではあるんですが、私の専門外なので判断しかねます。昔、別の学生で、ストレスでビルの屋上に登ってしまって周りを心配させるような人もいたし、歴代の困った学生リストの中ではまだまだなんですけどね。
ヒロシ
2005/10/30 10:09

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