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zoom RSS 「どうもありがとう」は「おかしい日本語」?!

<<   作成日時 : 2005/07/04 01:50   >>

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柳田国男(明治8年(1875)-昭和37年(1962))という民俗学者がいました。「蝸牛考」という本で、京都を中心として、ことばが地方に放射状に伝わって行ったという方言周圏論を唱えたことで有名です。

柳田の「毎日の言葉」(新潮文庫(や-15-5))の中で、「アリガタイ」の二つの使い方について述べています。


一つは神仏を尊ぶとき、もう一つは人に感謝を表すときに
(しかも「アリガタイ」はずなのに毎日の小さなことで)
使われると書いています。


またその語源について、

 言葉通り有り得ないもの、有るのがふしぎなものという意味で、
 人間わざを越えた神の御得御力を讃えてそう言って居たのが、
 いつから又人と人との間の御礼の言葉になったものか、少なくとも
 後の方は中世以前の記録には無いようです。(P15)

と、神の恵みに対して「アリガタヤー」という使い方から、
「アリガトウ」になったと推察しています。

さらにフランス語のメルシー(merci)も、イタリア語のグラッチェ(grazie)も
神の恵みという意味からきていると指摘してきます。
この辺は、人間の発想の普遍性を思わせるところです。

しかし、その中で面白かったのは、この百年ぐらいの間にも
「ありがとう」の使い方は微妙に変わっているということです。

一つは柳田が

 目上の尊敬する人にだけは、今でも私などは「有難う存じます」と謂います。

と書いています。これは敬語を使わずに言えば「ありがたいと思います」ということですね。
でも今はそんな風に「アリガトウゾンジマス」とは言わないでしょうね。
「ありがたいです」ぐらいは使いますけど、
ちょっと敬意が薄れて(敬意逓減の法則によるかな?)丁寧さが足りない感じです。

少なくとも私はそう言った事がありませんし、聞いたこともありません。
「存じます」は普通は書き言葉か、改まり度の高い待遇表現として
使われています。

さらに、「どうもありがとう」というのは、
明治末期の大人にとっては「おかしい」言い方だったようです。

柳田は

 私の父などは、孫たちが「どうもありがとう」というのを聞くと、いつでもおかしそうに笑いました。
 昔の人はそうは謂わなかったものと思われます。(P16)

と書いています。

「うつくしく」が「うつくしう」のように活用によって語尾が「う」になる「う音便」は、
平安時代から使われていたようです。

関東では江戸時代になって、「ございます」「ぞんじます」に続くときだけ
使われていたようです。(土井、森田1975:170)

今でも、「お寒うございます」とか「おいしゅうございます」など
使わなくはないですが、やや古めかしい感じがしなくもないです。

圧倒的に
 
 おはようございます、おはよう (はやい→はよう)
 ありがとうございます、ありがとう (ありがたい→ありがとう)

の二つの決まり言葉が頻度としては高いと思います。

「どうもありがとう」がおかしいくらいですから、「ありがとう」とだけいうのも
柳田国男の父の世代にはおかしかったでしょうね。

井上陽水&奥田民生の「ありがとう」(1997年)なんか聞いたら
どう思われるでしょうか。

これは、今「お寒う」とか「おいしゅう」とか言ったら変なのと同じくらい
おかしかったのかもしれません。

言葉の乱れについては、ら抜き言葉(見れる、食べれる)、さ入れ言葉(やらせて
いただきます)、「1000円からおかずかりします」、「よろしかったでしょうか」、「のほう」などなどいろいろ言われていますが、少なくとも「ら抜き」については変化の途中に
あってそのうち「ら抜き」のほうが一般的になるという人が少なくありません。

最近新しいのを聞きました。「大丈夫ですか」の使い方です。
「よろしいですか」の代わりに使うようです。

(コンビニで)
「1260円になります」
「まず1000円、ちょっと細かいのを、、、。あ、ないや。じゃ2000円で」
大丈夫ですかぁ?

というような例が日経BPの田邊俊雅氏の
書評:「大丈夫ですか?」って言われても困りますよねぇ…
に書かれていました。

この「大丈夫ですか」は、まだニューヨークでは聞いていないと思うのですが、これもそのうち一般的になるのでしょうか。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
こんにちは。
私が退職するときに入れ替わりで入った後輩の日本語がどうにもこうにもおかしくて、何度直してもなかなか身につかず大変苦労した覚えがあります。おかしい日本語を聞いてもおかしいと認識されない人にとっては、正しい日本語を使うのは難しいのでしょうね。
azur
2005/07/09 17:36
>azurさん
「おかしい」というのを知るのは難しいですね。私は、日本語の場合「ネイティブスピーカー」として完成するのは、社会人になって数年経ってからじゃないかと思っています。やっぱり敬語など待遇表現は社会に出て教育されないと使えるようにならないからです。
ヒロシ
2005/07/09 19:32

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