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zoom RSS 人の名前の呼び方の苦労:異文化間の切り替えの難しさ

<<   作成日時 : 2005/06/26 13:24   >>

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私は日本人ですが、現在「外国人」です。というのは日本ではなくてアメリカにいるから。

仕事は日本語教師です。同僚は日本人ばかりです。

時々で日本文化に即した行動をしたり、アメリカ文化(日本より
多様で一つのものとしてとらえるのは無理がありますが)に即した
行動をしたります。

そんな私が、二つの文化の間で、苦労していることが一つあります。

それは、上司のご主人(フランス系アメリカ人)の呼び方です。

その方は工学系の教授をしていらっしゃいます。
上司のご主人だし、学部は違うとはいえ大学での立場も上だし、年は私と親子ほどの
差があるし、「先生」をつけずに呼ばないわけにいかないと思ってしまいます。

ところが、この方は「先生」をつけて呼ぶなんてなんでひどいと
思っているそうなんです。

仮に名前を「パトリス・ルコント」とします。
私は「ルコント先生」か、頑張って「パトリス先生」ぐらいだと
ちょうどいいんですが、あちらはそれではいやで、
「パトリスさん」と呼んでもらいたいそうです。なんだか、恐れ多いです。

やはり「パトリス先生」と言うと落ち着くのですが、本人は
もっと親しげに(friendly)にしてほしいようです。

教えていたアメリカ人が家に遊びに来たときに、両親をファーストネームで
呼びつけられてショックだったという話を日本語教師は三匹の子ブタのウーさんが書いていました。

このことと、根が同じ文化摩擦かもしれません。

Ideほか(1992)の研究では、そもそも「丁寧」ていうのと、「polite」っていうののとらえ方自体が日本語と英語で違うそうです。日本語では礼儀にかなったとか、配慮のあるとかそんな形容詞との連想が強いんですが、英語の場合日本語と特に違っていたことは、「friendly」というのが「polite」から連想される形容詞のグループに入っているということです。

つまり英語で「丁寧に」接するというのは、カジュアルな雰囲気で親しげに、より距離をおかずに行きましょうというのが含まれるということらしいです。日本語の場合、丁寧にするというのは、いろいろな型というか、決まり文句を使って、逆に距離をとることが中心になりますよね。

日本文化では、「先生」というのは、やはり敬うべき存在ですが、アメリカ文化では
もっと近いというか、日本でも最近始まったそうですが、学生が先生の評価(evaluation)
をするし、日本式に「お世話になります」という感覚とは違うものがあります。

なお、親と先生との関係もより対等だという話が、いまどきのアメリカ的小学生(+トドラー)事情さんの記事にもありました。

アメリカという私にとっての異文化の環境を受けいれ、そこに順応しないわけにはいかない一方、
日本語を教える以上、日本文化というか日本の常識、感覚を持ち続けなくてはいけない
ことの難しさを感じます。

ほめられたときに、「いえいえまだまだです」といいましょうねと
教えていながら、英語でほめられたら、素直に笑ってThank you.と
言えなくてはいけないというのはなかなか難しいです。

英語でほめられたのに、強く否定して、自分はたいしたことないだの
なんだの言うのは、逆にほめてくれた相手に失礼だということは
分かっていても、つい「そんなことないです」と言いたくなってしまいます。

これは、新入社員で回りの先輩や、課長や上司にひたすら
必死に敬語を使おうとしていたと思ったら、取引先から電話が
かかってきて、今度は先輩や課長は身内の人間だから
謙譲語を使って話さなくてはいけないという切り替えと
同じくらい難しいです。


Ide, S., Hill, B., Carnes, Y. Ogino, T. and Kawasaki, A. (1992) T
he concept of politeness: An empirical study of American English and Japanese.
In: Watss, R., Ide, S. and Ehlich, K. eds., Politeness in language: Studies in its history,
theory and practice, 281-297, Mouton de Gruyter

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コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
この問題、結局のところは「郷に入っては郷に従え」が一番無難な解決法なのかもしれませんね。昔の人はいいことを言うものです。もちろん、この一言で終わらせることができるようなちっぽけなことではないですが。
うー
2005/06/26 20:56
そうですね。「郷に入っては」というが一番でしょうね。それから時々思うんですが、私達は「日本語」を教えているのであって、学生を「日本人」にしているわけではないですよね。だから「日本ではこういうとき、こうすることが多いですよ」ととりあえずは型を教えた上で、あとは自己責任で好きなようにさせるというか、そういうことをしたほうがいいのかなぁとも思います。
ヒロシ
2005/06/26 23:35
はじめまして。ささと申します。
リンクから、やってきました。

私も日本で、日本語を教えています。
まだまだひよっこの、日本語教師です。

アメリカで、日本語を教えていらっしゃるということで、
これからもいろんな話、聞かせてください。

よろしければ、私のブログ(http://blog5.fc2.com/sasako)
にも遊びにきてくださいね〜^^
ささ
2005/06/28 13:49
>さささん。
こんにちは。今度そちらにも、おじゃまします。私もかなり浦島太郎度が高くなっているので、いろいろ日本のことを教えてくださいね。
ヒロシ
2005/06/28 20:19
はじめてコメントします。ずいぶん昔の記事へのコメントでなんですが(今、はじめて読んだもので・・・)、人の呼び方で、英語でも親を呼ぶときは"Dad", "Mom" となって名前では呼ばないのは何ででしょうかね。日本語で「先生」などと呼ぶのと似た感覚があるのかな、と。
FH
2005/11/30 06:59
>FHさん
コメントしていただくのはいつでも結構です。これからもよろしくお願いします。さて、英語でも肩書きで呼ぶ場合もありますね。"Dad", "Mom" もそうだし、医者を“doctor”先生を“professor”警官を“officer”とか、日本語と同様に目上の場合が多いようですね。家庭によっては親でも"Dad", "Mom" じゃなくて名前で呼ぶうちもあるらしいという話を聞いたこともありますが、定かではありません。。。。
ヒロシ
2005/11/30 14:27

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